夢の中で、わたしは「呪」と「殺す」というキーワードで
Googleを検索していました。
わたしは結婚していて、子供もいる主婦でした。
家族に言葉や行動でひどい虐待を受けていて、ずっと何年も我慢してきたのだけれど、
あるものを買おうとしたら、ひどく激昂されて、注文書を破り捨てられたとき、
心底殺意を感じました。
わたしが買いたいと思っていたのは、中国製の綿棒でした。
100本で300円程度のものです。
「綿棒なんて100円ショップにもある。そんな高いものは
贅沢だ。絶対買ってはいけない。」
でも、100円ショップの綿棒はスティック部分がくねくねしていて、
使いづらいのです。
中国製の綿棒は竹ひごのようなスティックの両脇に適度な硬さの
コットンがついていて、とても優れものだったのです。
「たかが300円でなぜそこまでいじわるするの?」
「お前には贅沢品に金はビタ1文使わせたくない。」
そういって、せっかく書いた注文書を目の前で破り捨てられたときが
最後の藁でした。
これまでずっと贅沢できないことに我慢していたこととか、
性格の悪さにあきれ果てていたこと、横暴さへの不快感などが
堰を切ってあふれてしまって、殺そうと思いました。
あれこれと殺害方法を考えたり、いつ殺そうか考えたりしましたが、
わたしが夫を殺害したら、子供は加害者と被害者がともに親となり、
このあとの未来はどうなるのだろうとふと気になりました。
「この子だけは守り通したい。」
そう思って、何度も何度も深呼吸をしたり、般若心経を唱えたり、
フレグランスのお香を焚いたりして、ようやく殺意を落ち着かせましたが、
やはり死んでもらわないとどうにも気がすみません。
「わたしは夜叉だろうか。」
先日、富ヶ谷の主婦が夫を殺してバラバラにした事件を思い出しました。
ずっと暴力を振るわれて、耐えてきた人が、憎い人をバラバラに
切り刻むときってすっごい快感だろうなあ。
たとえ死刑になっても、それはこれまで溜まってた邪念を身体から
払う必要な儀礼でもある、そんな気がして、彼女のほかにも、
阿部定とか、ほんとにいろんな殺人事件の加害者であり、弱者でもある
女性たちのことが走馬灯のように思い出されました。
「彼女たちもずっと耐えてきて、もう残りの人生が無くなっても、
吊刑に処せられても、刑務所暮らしをしてもいいくらい、殺したい
欲求が高まったのだろうか。」
そんな事件や犯罪者とは一生交錯しない、無縁だと思っていた
学生時代品行方正できわめてききわけのよい、優しい子で通ってきた
自分が殺害者を身近に感じているのが可笑しくもあり、悲しくも
あったけれど、もう涙も枯れていて、自分があわれにすら感じなくなっていました。
「子供のために、できれば法的には殺害者になりたくない。
呪い殺すことはできないだろうか。」
そう思ってGoogleで「呪」と「殺す」を検索したのです。
呪術師と称する人のサイトがありました。
行ってみたら、トップページに大きくこう書かれていました。
「人を呪うと呪い返しがあります。わたしはたくさん呪って、
かなり成功しました。呪いはたしかに成功率が高いことを自身で
証明しました。最近の学校のいじめもなく、遺書もない原因不明の
たくさんの自殺はわたしが呪った人たちです。でも、わたしは人を
呪いすぎて、呪い返しによっていま自身が自殺したいほどつらい
毎日で苦しんでいるので、しばらくこのサイトの管理はお休み
させていただきます。」
「なんだ、このサイトは休止中か。呪い殺し方が見れないなあ。」
でも、そんなことで殺意は消えません。
この人が元気になって、サイトをまたはじめるまで待つか。
でも、会社員がずっと我慢してても突然ぶち切れて会社をやめて
しまうことがあるように、わたしももう子供のことも世間体も
未来もすべてどうなってもどうにも我慢できなくて包丁を手に
してしまう時がくるかもしれません。
「カルメン」のドン・ホセがカルメンを何度も刺して殺してしまったように。
思うに自分に貧しい生活をてさせられているだけなら、殺意はいだかない
けれど、どうにも許しがたい、殺さないと気がすまないと感じる時は
侮辱、馬鹿にされたり、存在や自身のテリトリーが侵害されすぎるとき、
暴力や言葉によって安寧な時間がもてない絶望を感じて、心休まる
時間がありえなくなってしまったときだと思うのです。
おそらくバラバラ事件の加害者の妻も、幡ヶ谷の歯科医の次男も
そうなのでしょう。
「わたしはもう『どんな場合でも人殺しはぜったいにいけない』
なんて語る資格はない。
いつ自分も殺害するかわからないのだから。」
そこまで自身の魂が堕ちてしまった、堕ちさせられた悲しみを
感じました。
結婚しなければよかった。
なにもない状態に戻りたい。
もうほんとに夫を殺して自分も死ぬだけしか道は残ってないのかしら。
再婚したい。
ふとそんな気持ちがよぎりましたが、いい相手ができてもメールは
夫がみるだろうし、そもそもデートできるお金がない。
服も買えないし、美容院にもいけやしない。
あきらめるしかありません。
そう思っているところで目が覚めました。
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