立原道造と銀座で

夢の中で、わたしは銀座を歩いていた。
レトロな雰囲気の、昭和ならパーラーといった雰囲気のお店に
なんとなく入ってみた。
珈琲を頼んだ。
珈琲カップの受け皿にクッキーが２枚載っていた。

ここ、以前にも来たことがある気がする。
いつ、誰とどういうシチュエイションでだったのだろう。
ああ、思い出した。
立原道造さんと来たんだ。

あの頃、数寄屋橋の交差点で待ち合わせをして
ここに何度か一緒にきた。
立原さんはオムライスかハヤシライスをよく注文した。

わたしははじめて来たとき、
とても高いアイスクリームを注文したら、
大皿にスプーンで丸く盛り付けたバニラアイスが２個、
苺のソースの中にあっただけで、
なんだか悪い気がした。
でもおいしそうに食べるねと
立原さんはニコニコしてみていた。

立原さんときて、食べたホットケーキやパフェ、
カレーの味も覚えている。

立原さんは建築の話や詩の話、絵の話、
それから旅行やファッション、流行歌の話など、
実に話題が豊富で、ロマンチストだった。

立原さんはあれから結核でまだ２０代なのに亡くなり、
わたしはお見合いで結婚して家庭を持ち、
またひとりになり、立原さんが行きたいと言っていた
長崎で暮らして・・・

と回想していて気がついた。
わたしは立原道造に会ったことがない。
このお店も初めてだ。
いまのとてもリアルな想い出はなんだったのだろう。

そこで目が覚めた。